真皮縫合はどれくらい「盛り上げる」のか?

真皮縫合

【BUYSS labo 01 / Episode 049】

所長
所長

ハート型の運針をする事で

・内反せずピッタリよる

・真皮の接着面積が増える

というお話をしましたが、dimple が点状瘢痕になって汚くなるという意見を頂戴しました。

その事について少し解説したいと思います

この図で説明している「ハート型運針」のdimple について・・・

dimple が汚くなるワケ

dimple が点状瘢痕になる理由はザックリ言って2つ考えられます

  1. 炎症による点状瘢痕
  2. 引き込まれた凹みの残存

それぞれについて考えます。

炎症による点状瘢痕

肥厚性瘢痕やケロイドの原因のひとつに「遷延する局所炎症」がありますが

主に皮膚付属器がその主座です

真皮縫合では
真皮の裏面(深層)から刺入して
皮膚の浅い部分を拾うように縫いますが

その際に
表皮に近い部分(真皮との境界)に針をかけると
浅い所に多い皮脂腺を多く巻き込む可能性が高くなります

また
吸収糸は程度の差はありますが
吸収される際には必ず局所炎症を伴うため
糸周囲には炎症が生じます

そのため
皮膚付属器(特に皮脂腺)を多く巻き込むと付属器に炎症を生じやすくなり
その部分に瘢痕や醜状変形を来す事となります

浅すぎる運針によって生じた炎症が遷延することで
点状瘢痕が生じることになる ということです

所長
所長

余談ですが・・・

抗張力が持続する糸ほどゆっくり吸収されるので
局所の炎症が起きにくくなります。
バイクリルなどの抗張力が落ちやすい糸の場合
張力に対抗しにくい&炎症が起きやすい
という両方の点で瘢痕が汚くなりやすい要素をはらんでいます

引き込まれた凹みの残存

また

瘢痕にはキズを開こうとする「張力」がかかっているのですが
この張力に対抗するための手段のひとつが真皮縫合です

真皮縫合による「減張」と創にかかる「張力」が
経時的に拮抗し続けて
最終的に瘢痕が成熟したときにフラットになる のが理想ですが
そのバランスが取れていないと
凹みが残る
という事になります

詳しくは後述します

所長
所長

dimple を作らないと真皮縫合ではない!という誤解を生じたかもしれません。。。

この図の意図する所は

運針上 最も浅い所から創縁が盛り上がる という事です

真皮縫合は創にかかる張力を減ずるために行うもの

そもそもですが

真皮縫合をすると瘢痕がキレイになる理由は
ケロイドや肥厚性瘢痕などの醜状瘢痕になる要素をできる限り無くしているからです

具体的には

・創縁の接触面積を増やす
・縫合糸が一定期間
創を固定し続ける

ことによって

創を固定する(引っ張られることに対抗する) ことを実現しています。

日本創傷外科学会HPより引用

動く場所ほど↑の図では縦軸の上の方になるため
なんとかして下方移動させるために行っているのが真皮縫合などの
キズの減張 です
術後のテーピングや圧迫もソレを目指してやっています

どれくらいの時間が必要か?

ではその効果がどれくらいの時間必要なのでしょうか?

一般的に
創治癒の段階では、局所に炎症反応が起こり、コラーゲン繊維が増殖し、創が収縮し、その後成熟していきます。
この治癒過程において
創自体に収縮の力が生じていることに加えて
皮膚が伸ばされることによって生じる
外力
が加わることで炎症が遷延し瘢痕が肥厚していく と考えられています
⇒詳しくは 小川令 先生など瘢痕・ケロイド研究会の先生方の論文を孫引きしていくとたどれます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsswc/1/1/1_1_20/_pdf

通常の創部で
成熟までに必要な時間は3〜6ヶ月
関節などの可動部では長い場合には5年程度見込んでおいた方が良いとも言われています
https://jsprs.or.jp/general/disease/kega_kizuato/kizuato/kizuato.html

つまり
少なくとも3ヶ月は
張力に抵抗する
ことをしつつ創自体の成熟によって収縮が落ち着くのを待たなくてはいけません。

キズは緩む

キズは変化していきます。

創面にかかる張力も
皮膚が少しずつ伸ばされることで
キズが成熟するに従って徐々に減っていきます

ですから
真皮縫合によって張力にどの程度対抗するか?は

キズにかかる張力による

ということになります

関節などの可動部が動きやすいってのは想像しやすいと思いますが
筋肉量が多い部分は皮膚も大きく動かされますし
絶えず色んな方向に引っ張られる部分も張力がかかります
また そもそもの皮膚の厚い部分ほどベースが硬いが故に張力も大きくなりますし
皮膚が進展されることでの「ゆるみ」が期待しにくくなります

力のかかりやすく瘢痕が肥厚しやすい部位としては

胸部:呼吸で動き続けますし大胸筋や腹直筋など太い筋肉に近接しています
腹部:腹圧にさらされますし恥骨付近は恥骨中心に色んな方向に力がかかります
大腿・上腕:股関節や肩関節など大きな関節と太い骨格筋があります

一方で

頚部や関節屈側は皮膚も柔らかく張力が小さいのでさほど瘢痕が広がりません

ザックリ言うと
張力のかかる所は引っ張られて行くので盛り上げておく⇒3ヶ月して徐々に平らになる
たいして張力のかからない所⇒固定をメインとして柔らかくなったら「真っ平ら」になる
というイメージで縫合していきます

この図で示す★の部分が運針上 一番浅い所ですが
先ほども言ったように
この★を基点に盛り上がるので

厚い皮膚&張力のかかる場所=ガッツリ盛り上げる=浅い dimple ができる
薄い皮膚&張力のかかりにくい場所=盛り上げもマイルド= dimple はできない

という事になります

真皮縫合シミュレーター

厚く緊張の強い皮膚の真皮縫合では↑こんな感じで
最も浅く運針されたところが凹みます

顔はどうか?

では、顔の創部は

引っ張られるのか引っ張られないのか?
どの程度の張力を想定するのか?

というと

表情筋によってかなり動く
けど
そもそもの皮膚がしなやか

なので

わずかに盛り上がる程度の減張 をするけど
固定はしっかりする(細かめのピッチで縫っておく) ということになります

また上下眼瞼については基本的に真皮縫合はしません

減張は真皮だけではない

創の減張を考える際

実は真皮のみでの減張では不十分な場合があります

張力が大きい部位では 真皮のみの減張では対抗しきれないので
さらに深部での減張が必要になります

構造的に真皮・皮下組織が乗っかっている「土台」である
浅筋膜や筋膜(深筋膜)からの減張を行う必要があります
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsswc/3/2/3_2_82/_pdf

手術での皮膚切開創の場合は
「元に戻す」
という操作で充分の事も多いですが
可動部では深部からの減張を行う必要がありますし
欠損を生じた創の閉鎖では必須と言っても過言ではありません

結局の所・・・

真皮縫合をどれくらい盛り上げるのか?

所長
所長

正直 どこだったら何ミリ みたいな事が言えないのですが・・・

頚部は盛り上げない
顔はフラットになるように
厚く緊張のかかる部分は2〜3ミリ盛り上げるつもりで
シワに直交したり関節など力かかる時は+1ミリ
減張したい具合によってガッツリ拾えば dimple も強く出来るけど絶対に表皮にかかるような浅さでは作らない

といった感じでしょうか。

当然、
どんな細さの糸使うか?
どんな素材・構造の糸使うか?
など、一概に言えないことも多いですし
「感覚」の部分も多くあります・・・

形成外科医のやっているのを見る だとか
形成外科医に直で教えてもらう

ってのが最もわかりやすいとは思いますが。。。

真皮縫合のハンドリングを練習しつつ
充分な量の真皮を拾う
ってのを意識するようにしてみて下さい

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